大判例

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大阪地方裁判所 昭和59年(ワ)306号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

「第四過失相殺について

一<証拠>を総合すれば、

(一) 訴外今給黎は、タクシー乗務員として加害車を運転中、無線による要車依頼に応じて喫茶店ぺペへ向うべく別紙図面記載の東西道路を、右道路付近には商店が密集する市街地であつて、左右両側には駐停車車両があり、交通量の多い道路であつたことから、ゆつくりと西進し、別紙図面①の地点でハンドルを左に切り、別紙図面②の地点で停車し、続いて進行していた小西運転のマツダタイタン二屯車が約三メートルの間隙をおいて停車、その後、訴外今給黎は、附近に所在する喫茶店ぺペへ向かうべくルームミラー、右サイドミラーで後方を確認し、空車メーターを倒し、降車しようと運転席側ドアーを開けたが、対向車が進行してきたことから、一旦右ドアーを閉めるようにし、対向車の通過を待つてのち一度は後方の安全を確認しており、また、喫茶店ペペへの連絡を急いでいたことから、後方の安全を全く確認することなく、再度運転席側ドアーを約四〇センチメートル開けたとき、後方から進行してきた被害自転車が右ドアーに衝突し、被害自転車は右に倒れ、右自転車を運転していた訴外雅雄は頭部から路上に落ち、一回転するように別紙図面の地点で転倒した。

(二) 訴外雅雄は、左小脇に本をはさんで左手をポケットに入れ、右手で運転しながら、ゆつくりとした速度で本件道路を西進し、南側歩道敷石と前記小西運転のタイタン二屯車及び加害車の左端との間隔が少なく、自転車の通行が困難な道路状況であつたことから、右タイタン車の右側を通り、続いて加害車の右側を通り過ぎようとした際、急に約四〇センチメートル程度開かれた加害車運転席側ドアーに衝突し、右側に転倒した。

(三) 加害車右前ドアーのエッジ地上高95.5センチメートルから101.5センチメートルの間に擦過痕が印象され、被害自転車左ブレーキレバー地上高101.5センチメートルから一〇五センチメートルの間に黒色及びクリーム色の塗料が付着していた。

<証拠判断省略>

二右事実によれば、訴外今給黎は、加害車運転席側ドアーを開けるに際し、本件道路が車道六メートル(片側三メートル)と狭く、駐・停車車両があるうえ、交通量も多く、商店が密集する市街地道路であつたのであるから、対向車両の進行に注意するだけでなく、自車後方からの進行車両に注意すべく、後方の安全確認を十分にしなければならない注意義務があるのに、これを怠り、はじめに右ドアーを開ける際に、ルームミラー及びサイドミラーで後方の安全を確認したことから気を許し、対向車の通過を待つてのち、喫茶店ペペへの連絡を急いでいたこともあつて再度右ドアーを開けた際には、後方の安全をまつたく確認せず、いきなり約四〇センチメートル開いた過失が認められるのに対し、訴外雅雄が、ゆつくりとした速度で被害自転車を運転し、停車中のタイタン二屯車及び加害車の右側を通過しようとした、その運行方法には何ら非難すべき行為はみられないのであつて、本件事故の発生については、訴外今給黎の右過失行為のみが、その原因となつている(なお、訴外雅雄が両手でハンドルを持ち、被害自転車を運転していたとしても本件事故の発生は避けられなかつたのであるから本件事故の発生と訴外雅雄の片手運転とは因果関係がない。)のである。しかしながら、損害の拡大、すなわち、訴外雅雄の死という結果については、訴外雅雄が左小脇に本をはさみ、左手をポケットに入れ、右手のみで被害自転車を運転していたことがある程度寄与していたのではないかとも推測しうるものの訴外雅雄が両手でハンドルを持ち、被害自転車を運転していたとすれば、死という結果を招いていなかつたともいいきれない本件では、訴外雅雄の片手運転は、死という結果への寄与につき、被害者の落度として、これを過失相殺の事由とすることはできず、慰藉料を斟酌するうえで、これを考慮するのが相当である。」

(坂井良和)

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